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2018年02月13日

アレルギーのようでアレルギーじゃない「ヒスタミン中毒

はじめに

サバを食べたらじんましんみたいになって、たぶんアレルギーだから青魚は食べないようにしてるんだ…

こんな話を聞くことがあります。

確かにサバはアレルギーを起こしやすい魚として有名ですが、サバを食べることで起こるじんましんはそのすべてがアレルギーとは限りません。

アレルギーの症状を起こす物質としてヒスタミンがありますが、実は魚の中でヒスタミンが発生していて、そのヒスタミンを摂取したことで起こる食中毒(ヒスタミン食中毒)の可能性もあるのです。

魚のヒスタミンはどこから来るのでしょう?また、どんな魚に多いのか、なにに気を付ければいいのか、考えてみたいと思います。

魚のヒスタミンは細菌が作る

ヒスタミン食中毒を起こす魚のヒスタミンはどこから来るのか?ですが、これは魚の筋肉に多く含まれるヒスチジンというアミノ酸が「ヒスタミン生成菌」によってヒスタミンに変換されることで魚の肉にたまってきます。

このヒスタミン生成菌は魚を室温で放置することで増殖し、ヒスチジン由来のヒスタミンをたくさん作ることになります。

魚の肉が腐敗するとアンモニアが増えて強烈な臭いを発しますが、ヒスタミン生成菌は腐敗の進行とはあまり関係なく増殖するので、腐敗が進行していない(=まだ臭くない)魚でも発生することがあります。

ヒスタミン生成菌は本来魚には存在しません。
では本来どこにいるのかというと、ヒトや動物の腸内にいるものです。

つまり、魚の肉にヒスタミン生成菌が付着・増殖するのは水揚げ後、ということになります。

網にかかった魚を漁船にあげる時に魚にはどうしても傷がつきます。 その傷からヒスタミン生成菌が入り込む。

水揚げや加工現場の衛生環境を徹底的に管理すればいいのでしょうが、加工場はともかく水揚げの最前線とも言える漁船上ではなかなか難しいのが現実でしょう。

ヒスタミンが多くなってしまう魚

ヒスタミンを作るのはヒスタミン生成菌で、ヒスタミン生成菌がヒスタミンの材料にするのは魚の筋肉のヒスチジン、ということになります。

こうなると、ヒスタミンの量はヒスタミン生成菌の量かヒスチジンの量によって決まります。

水揚げ時の環境はどの魚も同じと考えると、筋肉中のヒスチジン量によってヒスタミンのたまりやすさが決まる、と言えるでしょう。

ヒスチジンの量は筋肉の質によりますので、魚の種類によってヒスタミン食中毒が起こりやすい魚、というものが出てくることになりますね。

ヒスチジンが多いのは赤身の魚(血合いが濃い魚)です。

代表的な魚は

マグロ、カジキ、カツオ、サバ、イワシ、サンマ、ブリ、アジ

といったところでしょうか。

この中でも特に起こりやすいのが、カジキ、マグロ、ブリです。
サバやカツオも起こりやすい部類に入りますが、カジキやマグロほどではないのです。(ちょっと意外)

ヒスタミン食中毒の症状

多くのヒスタミンを蓄積してしまった魚を食べると、次のような症状が出ます。

・紅斑性発疹(顔や首)
・口や喉の灼熱感
・かゆみ
・悪心、嘔吐
・腹部痛と痙攣
・下痢
・頭痛
・動悸
・めまい
・結膜の充血

これらのほかに頻脈や呼吸困難、じんましんや血圧低下などのショック症状が出ることもありますが、頻度は稀です。

症状は出始めるのは問題の魚を食べてから10~30以内と早いことが多いが、1~3時間遅れることもある。
症状の消失は3~36時間で、ほとんどの場合は軽症で12時間以内に回復すると言われています。

家庭でできる処置としては摂取後1時間以内なら吐かせることで一応の対応となるが、多くのケースでは症状の発現が非常に早いため効果は薄いかと思われます。

医療機関では抗ヒスタミン薬の投与などで症状を緩和させ、下痢や嘔吐、血圧低下などの症状が出ている場合にはそれぞれに対症療法を行います。

医療機関を受診する際には
・食べた魚の種類や部位
・どのくらい食べたか
・どこで食べたか(家庭内か外食か)
・患者の状態(呼吸の状態など、気になる症状)
・摂取からの経過時間
などを伝えられると良いでしょう。

どうやって防ぐ?

食中毒の原因はたくさんありますが、加熱することで防ぐことができるものが多いですね。

しかしヒスタミン食中毒の原因物質であるヒスタミンは過熱で破壊することができません。

ヒスタミン産生菌によって大量のヒスタミンが蓄積されてしまった魚は、文字通り「煮ても焼いても食えない」魚になってしまうのです。

これがどういうことかというと、刺身ではなく焼き魚や揚げ物など火を通すものもダメ、缶詰にしてもすでにダメ、ということになります。

ヒスタミン産生菌は30℃~37℃ほどの環境を好んで増殖・活発になるので、夏場にマグロなどを室温に置いておくと一気に増殖して大量のヒスタミンを生み出してしまいます。

ヒスタミンを大量に生み出さない、蓄積させないためには、とにかく魚を室温で長時間放置しないこと。
これしかありません。

気を付けるべきことをまとめます。
・魚を購入した際は、常温に放置せず、速やかに冷蔵庫で保管するようにしましょう。
・ヒスタミン産生菌はエラや消化管に多く存在するので、魚のエラや内臓は購入後できるだけ早く除去しましょう。
・鮮度が低下した恐れのある魚は食べないようにしましょう。ヒスタミンは調理時に加熱しても分解されません。

家庭で気を付けていても流通過程でヒスタミンが蓄積していたらどうすることもできません。

こうなると食べる時に気付くしかないのですが、多量のヒスタミンを含む食品を口に入れたとき、くちびるや舌先に通常と異なる刺激を感じることがあります。

この場合は食べずに処分しましょう。

おわりに

江戸時代の川柳に「はづかしさ医者にかつおの値が知れる」というものがあります。

江戸っ子は借金してでも初鰹を食べたがったと言われますが、安く済ませようと値段の安い鰹を食べて当たり、医者の世話になって食べた鰹の値段が知られてしまって恥ずかしい思いをした、というものです。

江戸時代は現代に比べて冷蔵技術が格段に劣りますので、魚の鮮度を保つのは容易ではなかったのでしょう。

腐敗による食中毒も起こりやすかったでしょうが、ヒスタミン食中毒も今よりも多かったからこのような川柳が残るのでしょうね。

冷蔵技術が急速に発達するのは1950年代のこと。
それまではヒスタミン食中毒は主要な食中毒の一つだったと言われています。

現代では冷蔵技術も冷凍技術も格段に進歩しましたが、それでもまだヒスタミン食中毒は完全になくなってはいません。

よく「サバに当たる」などと言われますが、必ずしも魚が悪かったり食べた人の体質によるものではなく 、製造・流通行程で発生してしまったヒスタミンによるものかもしれませんね。

一度「サバに当たる」ような経験をしてしまうと青魚全般を避けてしまう人もいらっしゃるかと思いますが、もしそれがヒスタミン食中毒によって起こされたものであれば青魚を避けるだけではどうすることもできず、魚全般に気を付ける必要があります。

過去に青魚に当たったことがあってアレルギーだと思っている方はアレルギー検査なども行ってみてもいいかもしれませんね。

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